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とにかく速く演奏することによって、音階が予期せず外れていく瞬間の快楽

渋谷の109みたいな洋服屋を集めたファッション・ビルの一角にあるレコード屋。場所柄、学校帰りの女子高生やザ・ギャル!みたいな子たちがウロチョロするようなところになぜかこれがあった。赤地にAxCxのそこはかとなくお下品なロゴに「アナル・カント ジ・オールド・テスタメント」と日本語で書かれた帯。しかも試聴ブースにポップとともに面出しで展開されていた。
そもそも、僕はアナル・カントのファンというわけでもない。以前、トイズ・ファクトリーから出た『嫌われ者にゃワケがある』という邦題がついているアルバムを聴いたことがあるぐらいのもんだが、それをかっさらうように手に取りレジに向かった。今にして思えば、その商品が置かれている環境にやられたんだと思う。なんか、こう、わかったのだ、そこに来てしまったことが。ヤン富田言うところの偶然は必然。無意識にそれに当たってしまうと言うことなんだろう。

それはともかく、本作はタイトル通り88~91年のEPやライブ、デモをありったけ詰めた初期集。そのライナーの中で、アナル・カント(AxCx)のヴォーカルでリーダーのセス・パットナムは、ライナーで各作品のコンセプトやレコーディング話を懇切丁寧に書いている。最後は「最初にレコーディングしたときからずっとついてきてくれたファンと、まだ生まれてもいなかったファンにも捧げたい。じゃあね」という言葉でしめられるもののそれを書き上げた3日後の昨年6月11日に亡くなった。死因はオーヴァードーズ。計らずもファンに向けての本当のテスタメント(遺言)になってしまったわけだ──などと書くと話が湿っぽくなるが、名前が名前だけにそういうバンドじゃないのである。

何せ、本作に詰め込まれた音は「結成当初の目標は最も速く、うるさく、酷いバンドになることで、音楽性のない、歌詞のない、タイトルのない、楽譜もない音楽を作りたかった。どの楽曲も1/2秒から5秒の長さしかなかった」とライナーにもあるように、♪ワー、ダダダ。ギャー、ダダダ。以下、終わりの時が来るまでそれが続くだけ。
そう書くと、同時代的に似た構造の音を出していたナパーム・デスやS.O.B、もしくはゲロゲリゲゲゲの『パンクの鬼』とリンクさせたくなるのだが、ただ、これらのバンドの音には「パンク・ロック~ハードコア」という型がちゃんとある。しかしAxCxの場合はその文脈にいながらも、追求するべき型を意識的に向こうにうっちゃってる気がするのだ。

型がありそうで型がない。そういう意味ではパンクというよりロックンロールと形容した方が当てはまる気がする。しかも、最初の2本のデモは母親の部屋の屋根裏と居間のステレオで録られたものらしいので、こじつけるなら、まさしくガレージに近い。例えばギターにファズなどのエフェクターをかませて激しく弾くことで、生まれてしまうグガッとかギゲとかいうエラー音。それを拡張するとノイズ・ミュージックになるのだろうが、初期のAxCxはとにかく速く演奏することによって、音階が予期せず外れていく瞬間の快楽そのものを生み出そうとするのである。

特筆したいのが、ディスク1の8~9曲目に収録されている名作「5634 Songs EP」だ。もちろん、5634曲をそのまんま演奏したわけではない。ライナーによれば、20時間かけて16トラックのミキサーの各トラックに16曲分の演奏をいちいち録音し、3時間のマテリアルを作成。ミックスダウンして7インチEPにおさまるテイクを作り出したのだという。
演奏そのものではなく、あくまで素材とし、ミキシング・ワークによって音楽を作り上げていく──それはキング・タビーのダブ・ミックスのようでもあるし、マイルス・デイヴィスにおけるテオ・マセロのエディット、パブリック・エネミーにおけるボム・スクワッドのトラックメイクにも通ずるものがあるが、AxCxの場合は少し違う。いや、むしろ逆なのかもしれない。断片から生み出すのではなく、断片を割り出していくことなのである。それは「最も速く、うるさく、酷い」音を抽出することであり、自分たちの演奏の中から「音楽から外れていく瞬間」を際立たせていく作業なのだ。

そう考えてみると、セスの死因がオーヴァードーズだったというのは「瞬間的な快楽」という点でどこか示唆的にも思える。無から無へ。有もまた無へ。楽しんでくれ!

axcx.jpg
ANAL CUNT
The Old Testament 1988-91
(Relapse/リラプス・ジャパン)



More Shit Parade!!!!


余談だが、プンクボイは95年の大阪での来日公演(6月23日/なんばベアーズ)でハードコア・デュードとともに前座に抜擢されている。そのとき、セスは リハーサルでずっとゲロを吐く練習をしていたそうだ。昨年末のプンクボイのライブ時、トクはライブ前時々道ばたでえづいていたが(中身は出ていない)、それはAxCxに対してのオマージュだったのではないか とさっき思いあたった。まあ、その時は正直「いつも、ライブ前にビール飲みすぎるからだ」としか思わなかったけど。
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RECORDer編集長。
ひとりE.A.R.(永遠に丁稚)

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