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プロキシマルからディスタルへつなぐねじれた神経の線

本作はピンチ主宰のテックトニックから出たディスタルの1stアルバム。その日本盤CDにはこんなことが書いてある。
「これはダブステップ発ダーティー・サウス経由のTHUG-STEPだ!」
あなたはこれをどう思うだろうか。それでも聴こうと思うだろうか。自分すか? 昔のエイベックス系ダンスコンピのような煽りコピーにとりあえず爆笑させていただきました。別にバカにしてるわけではなく、いい意味で。でも、あとで色々調べてみたら、レコード会社が考えたものではなく、本人発信みたいだけど。

それはともかく、試聴機に入ってたので、再生ボタンを押して、適当に再生してはスキップしながら聴いているうちに、その笑いは徐々に凍っていった。それはその名称にふさわしいような度を超した電子音や低音が耳を襲ったからではない。むしろ、音の抜けが悪くチープな音像が広がったからだ。

ライナー(文:飯島直樹)やその引用元である『Data Transmission』『Daily Prinstonian Street』『dubspot』などのインタビューを引っ括めてみると、ディスタルことマイケル・ラスブン曰く、他人が311やベター・ザン・エルザなどに群がってる頃、フガジやフランク・ザッパを聴き始め、プライマスのファンにもなった彼が12歳の頃には初めて観に行ったライブはヘルメットだったという。そして、なによりアトランタ出身ということもあって、スリー・6・マフィアやゲトー・ボーイズなどの初期サウス・ヒップホップにも開眼。そのうちテクノやジャングルも聴くようになり、プロキシマルという名義ではブレイクコアをプレイ。それがダブステップにそれたのは、ピンチの「Punisher」を聴いたからで、音楽制作もここから本格的に始め、2010年には自身のレーベル、エンバシー・レコーディングス設立。また、ゲットーハウス/テックや(ご多分に漏れず)ジュークにも影響を受けており、いつの間にかデトロイトからアトランタに移住していたDJアサルトがレジデントを務めていたパーティーがその源らしい。

と、そんなあれこれが反映されたのがディスタルの音楽性ってやつなのだが、その履歴が示すように、全体的に雑な印象を受ける。TB-303やシンセのウワモノをサウス風に「ボコン、ボコン」と刻むTR-808という構造や、ベースラインとリズムの軸はダブステップ風かもしれないが、前述したようにどこかダイナミズムに欠け、「自称・サグステップ」のイメージを全うするにはスッカスカ。でも、その「スッカスカ」さがディスタルの個性となっている。303も808も実機ではなくサンプリングによるものらしいが、まさに「初期のダーティー・サウスの曲は、アナログ・テクノみたいだよね。暖かくて丸くてダークなんだ」という自身の発言をシーケンスの組み合わせだけで体現したものだと思う。

ただそれがあさって方向にエクストリームな形で現れたのが、M-9の「Gorilla」。ノイジーな電子音響にピアノが被せられ、さらに例の「ボコン、ボコン」という808のリズムが重なるだけ。そのウワモノとリズムは交錯する事もなく、ヤマなしオチなしそしてイミもなく5分09秒を平坦なまま駆け抜ける。たぶんジュークを意識してると思うのだが、人の心を躍動させないし、体が踊りたくてウズウズする事もない。アルバムには残念ながら未収録だが、「Stuck Up Money」でディスタルともコラボっているDJラシャドが、ジューク/フットワークのもとに作ったストレンジ・ノイズ「Reverb」の影響を感じさせない事もないが、むしろスロッビング・グリッスルや(初期の)キャバレー・ヴォルテールを思い浮かべる。聴いてるだけで室温が5℃くらい下がりそうなダークな変態トラックスだ。

なにはともあれ、楽曲のベースにあるものは、やはりピンチの「Punisher」なのだろう。なんとなくだけど、ビートやシンセの音色の端々にそれを感じ取る事が出来る。もし「Punisher」がマイケル・ラスブンのプロキシマル(中枢)としたら、彼がロジック9でシコシコ打ち込んで出来た「Gorilla」を初めとした奇怪な楽曲群は、確実にそのディスタル(末梢)なのだ。その神経をつなぐ線はかなりねじれてるけど。

distal.jpg
DISTAL
Civilization
(Tectonic TECCD-014/Pヴァイン PCD-93553)



ボイラールームでのDJプレイ。しかし帽子の文字は……。予想通りとはいえ、たぶん頭やられてるんだろう。

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RECORDer編集長。
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