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解剖台の上のミシンとこうもり傘の偶然の出会いは美しい

そのすべてをチェックしてるわけではないが、少なくとも近作のオー・ノーとのユニット、ギャングレーンのアルバム。そして、かつてのカレンシーはもちろんのこと、オッド・フューチャーのドモ・ジェネシスとのWネームによる最新ミックステープ『でも、ネタはどうであれ、愚直なまでにワン・シーケンスをループする「90sヒップホップ」の魅力をキープし続ける男、というイメージが強かったジ・アルケミスト。しかし、ソロとしては約3年ぶりの新作となる本作に関して言えば、自らのトラックにラッパーを起用して出来た曲で構成する、という形式から逸脱した制作方法(錬金術)をとったためか、世にも奇っ怪なシロモノとなっている。

フリージャズやサイケデリック・ロック、どこの国とも知れないポップス、ソウル、フォーク、ライブラリー・ミュージックなど(と思われる)のレコードを次々とターンテーブルに乗せ、その盤の溝に盲滅法に針を落とし、そうして取られたサンプルをエディット組み立て、45分のコラージュが出来上がる。さらにそれを30のトラックに分け、そこにロック・マルシアーノ、エヴィデンス、ギルティ・シンプソン、ダニー・ブラウン&スクールボーイQ、ウィリー・ザ・キッド、アクション・ブロンソン他多数のゲストラッパーの声を適当にハメこんでミックスダウン、以上!  という感じ。

もちろん、その通りに作ったわけではないだろうが、サンプル素材と各人のラップとフロウを一つの音と捉えたチープでザックリとした質感の音声詩+テープコラージュ、と言ったほうがピッタリとくる本作は、自身が
『HipHopDX』のインタビューに答えて「メーン! もし、アンタがこのプロジェクトについてのプロトゥールズのセッション画面を見れば、オレのことを正気じゃないって思うだろうね」と豪語しているように、まさしく「解剖台の上のミシンとこうもり傘の偶然の出会い」のようである。

「解剖台〜」とは、後のシュールレアリズムにも影響を与えたと言われる、ロートレアモン伯爵の散文詩『マルドロールの歌』の中での1フレーズから引用した有名な比喩だ。基本、学がないので恥をしのんで言うと、その作品は読んだことないし、周辺知識もゼロに近いのだが、ナース・ウィズ・ウーンド(NWW)の1stアルバムの題名『Chance Meeting on a Dissecting Table of a Sewing Machine and an Umbrella』の由来となっている事だけは知っていた。まあ、そのまんまなのだが、実際、このアルバムを始めとした初期NWWの音は、中心人物のスティーブン・スタップルトンが、同作のインナーに記載されている
〈NWWリスト〉に載ってるアーティストの音楽をまんまコラージュして作り上げていたという話がある。もちろん、アルケミストがNWWを意識していた事実なんてどこにもないが、前出のインタビューをなんとなく斜め読む限り、本作に関して言えば、サンプリングというより、カットアップ/コラージュという手法の方に自覚的なようだ。

ちなみに、僕はシカゴのジューク/フットワーク・コンピ『Bangs & Works Vol.2』収録のDJ Tホワイ「Orbits」でも、初期NWWを比喩として使っているが、それはノイズ〜前衛音楽におけるカットアップ/コラージュが政治的や批評的な論理が前提してあるのに対し、NWWの場合は対象の音そのものが持つ魅力が先にあるように思うからだ。中原昌也が初期NWWを紹介するときに引き合いに出したピチカート・ファイブに代表される渋谷系のように、とどのつまり「自分が好きな音楽を引用すればイイ音楽が作れる(かも)」ということ。年代やジャンル、制作方法の違いこそあれ、その元も子もない原則において、アルケミストの本作でとった手法とNWWの存在は点と線で繋がるのだ。

とはいうものの、僕は別にアルケミストおよびヒップホップをアヴァンギャルドと結びつけて悦に入りたいわけではない。90年代後半のNYで、その二つを意識的に結びつけた〈イルビエント〉なるムーブメントがあったが、個人的にそれらはどこか鼻につき、興味を覚えることはなかった(センセーショナルの1stやクレイジー・ウイズダム・マスターズの10インチEPなど、
ジャングル・ブラザーズの3rdがメジャーでお蔵入りになったことにより生まれた鬼っ子的諸作をサポートし、DJ/ラプチャーが出てきた場なわけだから否定はしないけど)。そもそも、自分で持ち出しときながらなんだが、アヴァンギャルドという概念自体、現代にどれだけ有効性があるのかも疑わしいし、NWW/スティーブン・スタップルトンよりも他にもっと適した比較対象がいたかもしれないとも思う。それでも、本作にそれらの単語が頭をかすむのは、「なんだかよくわからないが、新鮮な驚きを与えてくれる音楽」へのプリミティブな衝動と可能性をビンビンに感じるからなのである。

alchemist.jpg
THE ALCHEMIST
Russian Roulette
(Decon DCN-162)




色々書いたが、要はこのPVのように、いろいろとチープでテキトーでザックリした感じです(ネタにGGアレンと『コドモ警察』が!)。
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