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実験とは挑発とは声をデカくして訴えるものではない

「悪かないけど、この人が持っているサウスやGファンク特有のドロっとした感じが無くなっちゃったな」
約2年ぶりとなるアウトキャストのビッグ・ボーイの2ndソロアルバムを聴いたときに、そんなことを思った。しかし、だ。本作を何度か聴いているうちに、ビッグ・ボーイが掲示した「これ」がいかに実験的で挑発的か、そして自分の頭がいかに凝り固まってるかにということに気づいたのである。

本作で特に強く印象に残るのは、クラウド・ラップを媒介としたUSインディ系を意識したような全体的な作風であろう。M-4「Objectum Sexuality」はまさしくそんな感じだし、M7「CPU」は四つ打ちの曲だが、ヒップホップ〜R&B系のそのテの曲が、もし銃が手元にあったら、それで撃ちたくなるぐらいのダサいトランスになるのに対して、この曲はベースライン・ハウスで、その上に乗る女性ボーカルがなんともヒプノティックな印象を受けるミニマルなトラックだ。それもそのはずでこの曲でフィーチャーされているファントグラムはNY出身のドリーム・ポップ・ユニットらしい(ユーチューブでライブ映像を見たが結構良かった)。そのファントグラムはM-10「Lines」ではエイサップ・ロッキーと一緒に共演。また、「Thom Pettie」ではキラー・マイクとリトル・ドラゴンが。「Shoes For Running」ではB.o.B.とウェーヴスが。「Tremendous Damage」ではボスコが……などなど、ジャンルの垣根をヒョイと乗り越えるような試みが、T.Iとリュダクリス、U.G.Kとビッグ・K.R.I.Tなどのギラついた南部の面々が参加している曲に挟まれて行われているのだった。

そういう意味で言えば、今の風潮に焦点を合わせたアルバムとも言えるが、'10年に自身が監修を務めたジャネル・モネイの『The Archandroid (Suites II and III)』では、R&Bを軸にしながらも、ポスト〜インディ・クラシックやガレージ・ロックを意識したような曲があったり、オブ・モントリオールが参加してたりするので、その延長線上で本格的に自分の場で好きにやってみた、ということなのだと推測する。

ただ、個人的に以前にも書いたようにインディ系と呼ばれるモノにあまり興味がないし、それらの融合と言うならば、もうじき出るエイサップ・ロッキーの新作が出たら、その惹句は取られてしまうのかもしれない、あっちはそれが標準仕様だから。さらに、もう一つダメ押しで言うならば、個人的には年末に日本盤が出たウィズ・カリファとスコット・ウォーカーの新作の素晴らしさには敵わないとさえ思う。しかし、師のドクター・ドレー譲りの正統的なGファンク的なベースラインとリズムに、クラウド・ラップ〜トリル・ウェイブ、インディ・ロック的な音楽性を無理繰り乗っけたような独特な音は、ビッグ・ボーイという人、というより磁場があったこそ出来たものであるのも事実だ。

所属レーベルとのトラブルにより、完成後3年も寝かした上で、やっとこさリリースされたものという背景もあってか、とかく評価が高かった前作の『Sir  Lucious Left Foot: The Son of Chico Dusty』の路線をそのまま踏襲すれば、今まで通りの評価を得ただろう。でも、彼はそれを選ばなかった。いや、選ぶことが出来なかったというのが正直なところではないだろうか。

ビッグ・ボーイは
インタビューで「ドクター・ドレーはとにかく挑む方法を教えてくれた。俺は単なる繰り返しは出来ないということを知ったんだ」というようなことを語っている。実験とは挑発とは声をデカくして訴えるものではない。「でも、やるんだよ!」。自分で思うままにやったらシレっと行われてることに醍醐味がある。本作はなにかを代表するアルバムではないかもしれないが、ミックステープ『808s & Dark Grapes II』がキッカケで、メイン・アトラクションズがピーキング・ライツやジャム・シティーといった他ジャンルのアクトをリミックスするという事態になったように、確実に年をまたいで、2013年に繋がる可能性を秘めた作品なのだと思う。

bigboisec.jpg
Big Boi
『Vicious Lies and Dangerous Rumors』
(Def Jam)







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RECORDer編集長。
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