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無為な自然音も過剰に加工された人工的なノイズも皆同じ、差別なし

もう、10年くらい前になるだろうか。ストラグル・フォー・プライドのライブで奇妙なものを観た。

沼袋のスタジオでのライブだった思うが、前のバンドが終わり、セッティングを始めた彼らは、左右に振り分けられたギターとベースのアンプを移動させステージの真ん中でくっつけて、ドラムセットを隠してしまったのだ。いざライブが始まると、アンプからハウリング音や各楽器のエフェクト音が大音量で鳴る。ボーカルはマイクに向かって叫び、ドラムはブラスト・ビートを叩いているようだが、アンプからの雑音にかき消されてほとんど聞こえない。いつもなら暴動のようになるストラグルのライブだが、この時の客は皆どういう反応をしていいのかわからず、ほとんど棒立ちだったと記憶する。

それから数年して気づいたのだが、あれは実験だったのだ。一言に「実験」と言っても様々な解釈がある訳だが、ストラグルの場合、いかに他人に届かせるかということにおいて。つまりは「自分たちが音楽、とりわけハードコア・パンクについて考えてるのはこういうことです」。

カリフォルニアの2人組ブラック・メタル・バンド、スーテック・ヘクセンがやっていることはまさにそれだ。特に初期のシングル3枚をコンパイルした『Empyräisch』の溝に刻まれているのは、コントロールを失ったようなディストーション・ノイズ。ペイント・イット・ブラック!黒く塗りつぶせ! でも、そのベタ塗りの仕上げは雑でところどころ余白が。そこに入って埋め合わせているのがブラストビートと亡霊の阿鼻叫喚を思わせるようなボーカルである。それをもって完成と成してるわけだが、ミキサーの普通だったらフェイダーを上げちゃいけないチャンネルのレベルメーターだけが赤になってる感じ。とにかく異様なまでにアンバランスな音楽なのである。

また、下の動画を観る限り、スーテックのライブはツインギターの演奏に、さらにギターをアンプにハウリングさせたり、変な自作パーカッション(?)を叩いたり、ローランドのSP-404みたいな簡易サンプラーからポン出しでビートループやSEを流すという形式で行われているようで、そこらへんにあるものでなんとかしていくようなプリミティブな感じも、前述のストラグルのライブの音の出し方とも共通しているのではないだろうか。



話を『Empyräisch』に戻そう。本作は楽曲云々で語るものでもないと思うが、強いて特筆するなら、イントロに教会の鐘の音に木が燃えるような音のSEが挿入されているA-2「Murmur」だろう。もちろん、このSEはブラック・メタルの悪名が轟くきっかけとなった、バーズムのカウント・グリシュナク(ヴェルグ)が起こした教会放火事件のオマージュと思われる。正直まだそんなことやってるのかよ、と思わなくもないが、メンバーのケヴィン・ギャン・ユエンは『Crustcake』のインタビューで「スーテック・ヘクセン結成前から、街中や山を歩いてはフィールド・レコーディングをしていた」と語り、「フィールド・レコーディングやノイズのテクニックはクリス・ワトソン、秋田昌美、ポウ・トーレスのような人たちが発明したり発見したものだが、それはニューロシスおよび別ユニットのトライブス・オブ・ニューロット、スワンズ、ウルヴェルといったバンドが出す音とも同じように聞こえるんだ」というようなことも語っている。つまり、無為な自然音も過剰に加工された人工的なノイズもヘヴィーで禍々しい音として同一線上に存在しているところが、本作の一番の魅力なのだと思う。

しかし、その後のスーテックは違う方向へ進んでるようだ。『Luciform』('11)で壮大にノイズ・ブラック・メタルをけたたましくならした後は、『Behind The Throne』('12)は曲も長尺になり、過剰なハーシュ・ノイズはアンビエンスを深めビートレスに。さらに『Larvae』('12)ではマスタリング・エンジニアに、サン・O)))のスティーブン・オマリーらとカネイトで激重ドゥーム・メタルを追求し、解散後はドローン関係のマスタリング/制作も多く手がけるジェイムス・プロトキンを迎え、徐々に…というかギンギンにドローン・メタル方面に前のめりなご様子。しかも最新作『Breed In Me The Darkness』は「The Second Coming Mixes By Andrew Liles」というサブタイトルが示すように、ナース・ウィズ・ウーンドのサポート・メンバーでもある実験音楽家、アンドリュー・ライルズが参加。この共作アルバムは昨年秋にカセットテープで出て即完売。2枚組LPおよびCD化も予定されているが、まだ日本に入ってこないので、試聴段階で言わせてもらえば、まるで『Empyräisch』が白黒反転したようなアンビエント・ドローン、いやヘタしたらポスト・クラシカルと言っていいくらいだ。



そもそも、ドローン・メタルという音楽自体、その祖であるアースのディラン・カールソン曰く「メタル・ミュージック(註:具体的にはメルヴィンズのようなスラッジ系らしい)とラ・モンテ・ヤングのミニマル・ミュージックの融合」というコンセプトから始まったというし、そのアースのトリビュート・バンドである、前出のサン・0)))のスティーブン・オマリーがエディション・メゴ主宰のピタとKTL結成以降、電子/実験音楽関係に大きくコミットしたりするような流れともリンクしているようで、それはそれで興味深くはあるのだが、スーテックの場合、前が前なので少し収まりが良くなっちゃったかなという感も否めない。

しかし、個人的にはその変遷をリアルタイムで追っかけた訳ではなく、むしろ遡って聴いたせいか、この流れは必然だったようにも思うのだ。「自分たちが考える音楽、とりわけヘヴィ・ミュージック」のあり方が変わったのだろう。ノイズ・ブラックからアンビエント・ドローン、果てはポスト・クラシカル。すなわち今は極から極へ行くか行かないかの過渡期とも言える。はてさてスーテック・ヘクセンがさらに転がり続ける先とは?
 
sutekh.jpg

Sutekh Hexen
『Empyräisch』
(Vendetta Records Vendetta 69)

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