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なまこじょしこおせえの卵子の成れの果て

この2月に再発された『なまこじょしこおせえ』(または『賣国心』『Infecund Infection』)は、1982年、前衛音楽集団「第五列」のデクやオニックらを中心に、ガセネタ〜タコの大里俊晴、アー・ムジーク、園田佐登志、デヴィッド・トゥープ&スティーブ・ペレスフォードといった人たちが参加し、ピナコテカ・レコードから自主制作盤として発売されたオムニバス・アルバムである。

長年、幻の名盤とされていた本作。実は以前、第五列のホームページがあったとき、数多の関連音源や自主出版物とともにフリー・ダウンロードで公開されていたので、とりあえず一聴はしてたのだが、改めて聞き直して思ったことがある。それは彼らがやっていた即興、もしくはフリー・ミュージックというものをジャンルとして捉えるならば、この時だけに通用してただけのものだと思うが、「なんだかよくわからないけど、とにかく何でもいいから音を出してみよう」という精神性と「曲としてカタチになってるのかよくわからないモノ」というナンセンスの魅力においては、今でも十分通ずるものではないか、ということ。

『なまこじょしこおせえ』の30年ぶりの再発と、(大まかに)時を同じくして、マシューデイヴィッドのレーベル、リーヴィングのコンピ『Dual Form』に編まれたサイクリスト、オッド・ノズダム、ラン・DMT、サン・アロウ、トランス・ファーマーズ、ディンテル、ドリーム・ラヴといった連中が繰り出す音は、前述の精神性とナンセンスの魅力だけがあふれている。テクノ、アンビエント、ヒップホップ、ベース・ミュージックという型を守りつつも、どことなくボヤけていてつかみようがない。

よって、どれをとってこうだ、という曲はないのだが、あえて特筆するならば、他のレビューでも指摘されているように、肝心の演奏よりも客の拍手や歓声の方がデカい、ジュリア・ホルターによるアーサー・ラッセルの「You & Me Both」のカヴァーだろう。

namako.jpg dualform.jpg
L:V.A.『なまこじょしこおせえ』(Super Fuji FJSP-185)
R:V.A.『Dual Form』(Leaving/Stones Throw STH-236)


そもそも現代音楽畑でチェリストとして演奏をしていたラッセルが、ディスコ・ミュージック方向にズレていったのはダンスフロアでの体験だった。

DJがレコードをかける、その溝から信号として伝わった音がスピーカーから大音量でフロアに放たれる。フロアにいる人間はそれに反応する。体を動かし嬌声をあげる。そのリズムに合わせて手拍子を打つ者も、その歌詞に合わせて歌う者もいるだろう。その他息づかい、体臭ほか諸々。

つまり、音楽そのものもあるだろうが、ディスコという空間の中でレコードから機材、人間、生(ラッセルは同時に自らのセクシュアリティも変更したらしいので「性」も含む)といった様々なフィルターを通された果てに聴覚を刺激する音──ダンスフロアで受けたその衝撃を他人に忠実に伝えようとしたあまり、ラッセルが中心となって制作されたディスコ・レコードは「ダンスする音楽」としては、あまりにフックがない抽象的で感覚的なモノになったわけだが、ホルターはその感覚にオマージュを捧げているのだと思う。

なにより、原音よりフィルターを通した音響効果を重視するという視点は、以前にも書いたようにマシューデヴィッドの個性そのものだ。そんな彼のレーベルらしく、なにかのフォーマットに合わせながらも、結果論としてのあやふやでつかみようのない、なんともいえない音楽。

もちろん、この2枚は違う、音楽性も時代も背景も。ただ『なまこじょしこおせえ』のライナー中に、アイス9の「メロダイン」という曲に対して、バンドのメンバーが書いたものにこんな記述がある。

「純化し、先鋭化し、やせ細り、閉じて極へたどり着きたいという気持ちがある。誰も知らない言葉を所有したいという淫らな願望。
これを否定するもう一つの気持ちがある。皆と笑いたい。たった一人で遠い山まで行き着いてもそれが何だ、という気持ち。
ICE9であることは、この二つの気持ちのバランスを取るのに効率的なように見えました」

この「ICE9」という固有名詞を前出のマシューディヴィッドやジュリア・ホルター以下のアーティストはもちろん、引き合いに出したアーサー・ラッセルに変えてみてはどうだろう?

またリーヴィングと同じく、カセットテープ中心のリリースを重ねているイギリスのホットカーを拠点とする、広義の意味でのテクノ・レーベル、オパール・テープスのコンピ『Cold Holiday』に収録された、ベーシック・ハウス、タフ・シャーム(ドロ・キャリー)、ヒュールコ・S、クラウドフェイスほか。または以前紹介した日本語ラップ・オムニバス『かなへびコンピ』の第二弾に参加した3.2ch、マペト、ハイトビーツらに変えても通じるものではないだろうか。

『なまこじょしこおせえ』が吐き出した卵子が受精して出来たものとして、そこらへんのセレクトが正しいのか間違ってるのかは自分でもよくわからないが、とにかく、今のところはそんな気がする。

choliday.jpg  kanahebi.jpg
L:V.A.『Cold Holiday』(Opal Tapes OPAL015)
R:V.A.『かなへび屋/かなへびコンピ2013冬』(かなへび屋)

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