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シャッフルマスター・カナモリの夢は夜ひらく

 「90年代後半、日本のテクノシーンを牽引した重要人物の一人、DJシャッフルマスターが復活、カナモリ名義でアルバムを出す! 」という報に、かつてはテクノ専門学校生(ただし中退)だった僕も色めき立った一人だ。しかし「いやあ、彼の曲を聴くのは久しぶりだなあ」と記憶を辿った時、ある事実に思い至ったのである。

「俺、シャッフルマスターの曲、ちゃんと聴いたことないかもしんまい」

そうなのだ、聴いたことないのだ。DJプレイも聴いた覚えがない。カナモリがDJシャッフルマスターとしてブイブイ言わせていた時期は、僕のテクノ熱は下がっており、(前にも書いた気がするが)アレック・エンパイアの来日時に共演していたメルツバウのライブ、もしくはガバDJとハードコアのバンドを突き合わせていたイベント「マーダーハウス」などを通じて、U.G.マン、スライト・スラッパーズ、メルト・バナナなどのライブを見て、わけもわからずにそっち関係に興味を持ち始めた時期に当たるから。

ただ、彼が参加していたレーベル兼ユニット、サブヴォイス・エレクトロニック・ミュージックは本当に好きだった。特に「Vampirella」は今でも色褪せないジャパニーズ・テクノのクラシックだと、紫のカラーレコードに針を落とすたびに思う。しかし、10年以上経ってから知ったが、実はこの曲は相方の佐久間英夫によるものらしい。となると、旧『エレキング』で本名の金森達也名義で書いた、クリスチャン・ヴォーゲルへのインタビューを軸にしたシカゴ・ハウスの記事が素晴らしいけど、音楽そのものじゃないからなあ……。

それはともかく、2枚組LP+(同内容の)CDというフォーマットで発売された本作。いざ聴いてみると、ミニマルという軸は変わらないが、アフリカン・リズムにダブっぽい音響処理、かつインダストリアル、ドローンな質感を混ぜ合わせたような、まさに今っぽいといやあ今っぽいエクスペリメンタル・テクノ。とはいえ、B面の「Vento Soffia Da Est,Una Sera Di Tokio」のアシッドなベースラインに、サブヴォイスのライブPAで、実機のTB-303をけたたましく鳴らしたあの響きを思い出したりも。

「今っぽさ」へのベテラン組のアプローチという点で言えば、前述した流れのダークホース的なレーベルのひとつ、NNAテープスからリリースされた、サージョンことアンソニー・チャイルドが自身の未発表曲を再構築してドローンに仕立てた『The Space Between People and Things』。もしくはNYで303/606/909をシンクさせてポスト・ハードコア(テクノ)〜プレ・ハード・ミニマル……要はX-103みたいな直情的なテクノをカマしていたX-クラッシュの片割れ、アダム・Xがよりそっち方向によりブレたADMX-71名義の『Second System』とも共振すると思う。

しかし、本作はサージョンともアダム・Xの最近の指向とはどこか違う。その異化作用を高めているのは、カメラマンの星玄人が90年代の歌舞伎町や黄金町、西成といった街の夜行性の生き物たちの蠢きの瞬間を捉えた写真を、石黒景太がデザインしたゲートフォールド仕様のジャケットおよびブックレットであろう。写真自体は90年代に撮影されたもののようだが、モノクロで粒子が粗く、また石黒の帯を含めた文字のフォントと配置の絶妙さもあり、まるで80年初頭の自主盤のジャケのよう。

『夜半解体』という邦題が示すように、本作のコンセプトはざっと言えば「夜のサウンドトラック」なのだと思う。だが、ここでいう「夜」とは、当時、DJシャッフルマスターとしてカナモリが鳴らした電子音で様々な人が踊っていたクラブ・カルチャーとしてのナイトライフを指すのではない。クラブと同じく風営法の対象である性風俗産業の男と女(同性同士も含む)が織りなしたもう一夜のおとぎ話なのではないだろうか。

常に夜は夢ひらく。そう考えてみると、D面の「It seemed that they vanished among Maniac Love」は、今は亡き青山のクラブを指すのだろうが、実は文字通りマニアックなラヴの在り方をも指すのかもしれない。

まあ、我ながらその見立ては考え過ぎかなとも思う。ともあれ、サブヴォイス時代から「DJがかけやすいトラックと最低限のパッケージやインフォ、それさえあればイイ。いや、トラックさえあればそれだけでも構わない」とばかりに、ダンス・ミュージックとしての強度を最優先していたように見えたカナモリが、12年もの時を超えて、このように視覚性とコンセプシャルな音を強く打ち出した作品を出してきたのが感慨深い。無駄にボケっと生きてみるもんである。


kanamor.jpg
Kanamori
『Dismantled Desire』
(四季協会 Shiki Kyokai October Autumn)
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テーマ : ワールド・ミュージック
ジャンル : 音楽

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PRE//SILENTNOISE主宰者。
RECORDer編集長。
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