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お前は”それ”を感じるかい?

LIVE  『Live Greatest Hits』(Vis A Vis VAV91-013/1991)

リズムマシンが鳴らす、チャカポカチャカポカ、という乾いた音。そこにマスターベーションの快楽に溺れた、ゲロ30歳の「♪ア~ン、ア~ン、ハアア、いいよ......」という、野太くもどこか女性的なあえぎ声。さらに彼はマイクを通して誰ともなしに囁く。「♪アシ~ッド、スペェ~ス」。そして「♪エクスタシィ~」。
山ノ内は時折、観客に罵声を浴びせながら煽り、その一方で、ゲロ30歳の快楽のバイオリズムと、フロアのレスポンスを見据えながら、リズムマシンのピッチを上げ下げする。必要とあらば、ストップボタンを押してノン・ビートにすることさえ厭わない。最後、ヒートしたゲロ30歳とフロアをチルアウトさせるかのように、鈴木ヒロミツの名曲「愛に野菊を」が流れて終わる。
[*1]
──あるクラブ・パーティーでの模様を収録した、ゲロゲリゲゲゲのライブ盤『Live Greatst Hits』の1曲目を僕なりに要約すると、このようになる。

僕は前回、ゲロゲリの音楽性について、あれこれと書いたが、実はあえて記さなかったジャンルがある。
それはハウス──シカゴで産声を上げ、それがデトロイト、NY、イギリス、ヨーロッパに飛び火し、やがて世界のあちこちのクラブで、そしてゲリラ的に行われる非合法なレイヴで鳴り響くようになった、ダンス・ミュージックである。
とはいえ、ハウスといっても、パンクもロックもノイズもそうであるように、一言では言い表せないぐらい様々なテイストがあるわけだが、この場合はどれにあたるかというと、やはりアシッド・ハウスということになるのだと思う。
ちなみにこの名称はシカゴのDJピエールとハーバート・ジャクソン、アール・”スパンキー”・コーラスによるユニット、フューチャーの「Acid Tracks」という曲がその語源となっている。



ローランドが1982年に発売したベースマシン、TB-303による奇怪な電子音は、ヨーロッパに渡って、レイヴ・カルチャーで流通していたドラッグ、エクスタシーと結びついて「We Call It Acieeeed!」というスローガンと共に、世間を恐れさせるほどのムーブメントへと拡大する。

そう、まさにアシッド、スペース、エクスタシー。そのゲロゲリが出演したパーティーとは<クラブ・アンドロメダ>。1991年3月2日土曜日の深夜、クラブチッタ川崎で行われたものだ。共演者は電気グルーヴ、モデルプランツ、GRAVE STYLE、スペースインベーダーズ、UNDERGROUND ORGANIZATION。そしてDJにMAD、DJ BABY TOKIO。主催はVOICE PROJECT。第1回目のイベントだった。
[*2]

GRAVE STYLEのメンバーとしても共演し、山ノ内と交流があることから、ライブ撮影もやっていたという宇川直宏は、当日のゲロゲリのライブセットについてこう語っている。
「山ノ内がリズムマシンをバックにゲロ30歳の体にギターのシールドあてて、汗を伝って電流を体に流しながらオナニーするライブだったよ(笑)。当時、もーヴォーギング全盛で、かなり踊れてた(笑)」
前回、山ノ内がゲロ30歳の存在を「あくまで音のマテリアルを生み出すことの一環」と発言していることを書いたが、このライブはその特性が最も生かされていると思う。



ところで、話はちと変わるが「見立て」という言葉がある。現在は美術から心理学まで様々な意味に使われているようだが、そもそもは漢詩や和歌の技法からきた文芸用語であり、「物を本来のあるべき姿ではなく、別の物として見る」というもの。それを千利休が自らの茶の湯の世界に応用し、日常の生活用品を茶道具に取り入れたのだという。

つまり、山ノ内はゲロ30歳を音を鳴らす道具=楽器に見立てたのだ。その楽器の使い方は様々で、ハードコア・パンクの演奏に、女王様にムチで叩かれたときの喘ぎ声を合わせたり、前回貼ったライブ映像のように、掃除機でチンポを吸ってスッポンスッポンやったりするわけだが、このライブのときは何に見立てたのだろうか? 

そうです、やはりアシッド・ハウスといえば、やはり前述したTB-303です。
そもそも「Acid Tracks」が出来たのは偶発的なものだった。DJピエールは中古の303を買ったはいいものの、まるで使い方がわからなかったのだ。友人のスパンキーとハーバートが303で遊んでいて、いたずらにそのコントロールボタンを全部最大にまで引き上げたところ、狂ったようなノイズが発生。その音に喰いついたピエールは、様々なボタン、ノブを適当にいじりまくり、「♪ビョンビョンビョウン、キュルルルルル」(言語化不可)という、あのベースラインが生み出されたのだという。

ピエールたちから手紙で依頼されて、同曲をプロデュースしたシカゴ・ハウスの第一人者、マーシャル・ジェファーソンは、303をアシッド・マシーンと形容して、こう言っている。
「オー、シュート、メーン! アシッド・マシーンにはプログラムなんかしやしねえ。なんか音を出せばいいだけだ」
●プログラム出来ない(それは純然たる楽器ではないから)
●なんか音を出す(主に自家発電で)
●そして、狂ったようなノイズ(その存在自体が)
これって、つまりは(少々強引に解釈すれば)ゲロ30歳のことじゃねえか!? オー、シュート、メーン!! 彼が擦っていたのは、チンポではなく303のジョイ・スティックだったのであり、いわばゲロ303歳だったのである。

と、これ以上続けると、くだらないヨタと下ネタばっかり書き飛ばしそうだが、そのついでに、この時のライブをひとつの曲と見立ててみよう。
そうすると、もうひとつ雛形となる曲が浮かび上がってくる。それは同じくシカゴのDJ、リル・ルイスが89年に出したヒット曲「French Kiss」である。まあ、知ってる人には「なんとベタな」と苦笑されるかもしれないが、少なくとも自分にとっては、ホントなんだからしょうがない。



この曲は電子音のシーケンスと四つ打ちが実に気持ちいい、後のトランス・ハウスやディープ・ハウスに影響を与えた名曲だ。途中で女の喘ぎ声が絡み、ビートが徐々に減速しブレイク。ここで曲は喘ぎ声と電子音だけになる。そして、またビートとシーケンスがゆっくりと刻み始め、そのピッチはどんどん上がって高速化していって、再びブレイクしてまた元に戻る。
このゲロゲリの曲を通して聴くと、「リズムのピッチの上げ下げと喘ぎ声」という構造が全く同じなのだ。さっき、遊びで両曲を適当にミックスして聴いてみたんだけど、ゲロ30歳の喘ぎのピッチって、意外と「French Kiss」のシーケンスのピッチと合う気がするのだ。僕はDJじゃないから、単なる素人感覚でしかないが。

ところで、山ノ内は本作の1曲目のクレジットに「THIS LIVE SOUNDS IS A TRIBUTE TO SUICIDE(ALAN VEGA AND MARTIN REV)」と記している。
これは音楽的にはもちろんのこと、スーサイドがエルヴィス・コステロの前座を担当したとき、客からブーイングを浴び、暴動になった模様を収録したライブ盤『23 Minutes Over Brussels』[*3]を意識しており、山ノ内自身とゲロ30歳を、このときのスーサイドになぞらえているのだろうと推測する。このゲロゲリのライブ盤の帯には、わざわざ「客のケンカ入り」とあるのだから。

しかし、本作の裏ジャケにゲロ30歳のアップの写真とともに「THANKS! CRAZY AUDIENCE!!」とあるのを改めて読み返した僕には、スーサイドのディス・コミュニケートが生み出した伝説よりも、次のようなものにこそ当てはまるような気がする。
「みんなひっくり返って踊ってたよ。仰向けになって両足を振り上げてるやつもいた。『ワオ!』だね、まったく。みんなクレイジーになって、スラムダンスを始めるわ人をブン殴るわ、とにかくめちゃくちゃになっていた」(DJピエール)
これは、ジェファーソンの手が入る前の「Acid Tracks」のオリジナル・バージョンのテープをシカゴの<ミュージック・ボックス>のレジデントDJ、ロン・ハーディーが4回目にプレイしたときの光景だ。もちろん、これはドラッグでみんなキマってたからこその反応であり、この日のチッタにいた客たちが、同じだったかどうかはわからないのだが、こっちの伝説を引っ張りだした方が、より「らしい」と思う。

なぜかって? 
I've Losing control.Where's Your Child.Land Of Confusion.そしてCan You Feel It?
20年近く前のたった一夜。山ノ内純太郎とゲロ30歳は偶発的に発生した、最高にブルシットなアシッド・ハウスでフロアを完全にロックしたのである。

gerolive

【追記2/11】
●書き忘れていたが、ジャケのライナーノーツの英文は佐々木敦によるもの。ざっと読む限り『パンクの鬼』のレビューらしく、最初はアンビエントに喩えていて、最後には「少なくとも僕にとってはKLFよりBGMに適している」とまで書かれている。KLFはアンビエント・ハウスの名作『Chill Out』のことを指しているのだろう。それはともかく、そもそも、何かの雑誌に載ったレビューを英訳したのか、佐々木が英文で書いたのかはわからないが、山ノ内がKLFについてどう考えていたかは興味深い。
●idea of a jokeのベスト盤『We are all making history』(LESS THAN TV)のボーナスディスクに入っている「NO MERCY(永田一直 REMIX)」は、ソドムの「Acid Tommy」をベースに、川谷拓三の前口上、そしてゲロ30歳の喘ぎ声をサンプリングした、原曲無視のアシッド・ハウス! ゲロゲリのリ・エディット・バージョンともいえる出来。



【補足】
[*1] この曲は坂上二郎主演の刑事ドラマ『明日の刑事』(TBS系)の主題歌。ゲロゲリのライブで使われているものは、オリジナルではなくTVバージョン。ちなみにモップスはGSバンドのなかで、最もアシッド・ヴィジョンを打ち出したバンドだった。 
hiromitu (EXPRESS ETP10331/1977)

[*2] VOICE PROJECTはDJ BABY TOKIO(関根信義)による団体。<クラブ・アンドロメダ>を始め、下北沢ZOOのレギュラーイベントなど、90年代前半のテクノ/ハウス・イベントを多数プロデュースした。ちなみにVOICE~とアルファ・レコードが共同で作ったフリーペーパーの創刊号には、KEN=GO→による同イベントの紹介文が掲載されているが、1回目のメンツは誰一人記されておらず、どうも内部的にはなかったことにされてる模様。

[*3] 1978年6月16日、ベルギーのブリュッセルにあるコンサート・ホール、Ancienne Belgiqueで行われた。現在、このライブ盤は、ミュートから出ているファースト・アルバムの再発CDのボーナス・ディスクで聴くことが出来る。

【参考資料】
『フールズ・メイト』(1988年3月号/フールズ・メイト)
『MASSAGE』(Vol.6/MASSAGE)
ビル・ブルースター+フランク・ブロートン・著/島田陽子・訳『そして、みんなクレイジーになっていく』(プロデュース・センター出版局)
デヴィッド・トゥープ・著/佐々木直子・訳『音の海』(水声社)
野田努『ブラック・マシン・ミュージック』(河出書房新社)
共著『クラブ・ミュージックの文化誌』(JICC出版局)
『FUTURE 01』(1992年1月発行/アルファ・レコード)
表千家不審菴(HP)
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