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互いの人間的資質からくる独特の捩れは「♯●●」みたいな常套のタグをなんとはなしに拒否する

とりあえず、先に言っとくとオススメしません出来ません。MCバトルの諸大会で話題になってるというラッパー、ハハノシキュウの初となるアルバムは好きか嫌いしか無い。ハマる人続出、併せてハマらない人も続出。もし「これを好きです」という行為が、自身のセンスやアイデンティティを問われるものだとするならば、本作に関して言えば100点か0点しか与えてくれないだろう。そもそも、こうして書いてる僕でさえ、本作に惹かれながらも、実のところ、よくわかってないまま書いてるのだから。

タイトルや曲名からしてそうなのだが、ハハノシキュウのラップは韻を踏んでどうこうというより散文詩的だ。ビートのまにまにどれだけ自分が言いたい事を詰め込めるかを争うが如く、筒井康隆や手塚治虫のシニカルな部分を隙間恐怖症的につめこんだようなリリックを奏でる。ラップするでも歌うでもなく、あくまでも「奏でる」なのだ。というのは、ハハノシキュウは「あ・い・う・え・お」という言葉そのもので発音するのではなく、その言葉の響きの部分でラップするからだ。母音よりも子音で、と言うべきだろうか。もちろん、それ自体は珍しいものではなく、むしろラップの世界では定石なのだろう。

しかし、ハハノシキュウが他と違うところはその何とも言えない声質だ。自身はそれをシューゲイザーに喩えているようだが、確かに単なる発声という範疇を越え、音響としてまさしくそれ。そこに陰鬱なブレイクビーツが絡むと、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのようにも聴こえるのだ。特にラストの「私小説」みたいに、バックトラックにリリックがおさまらなくて、最後にアカペラ状態でラップしている部分なんて、まるでケヴィン・シールズが弾くギターの残響音。

そんなハハノシキュウの独特の声を際立たせてるようなトラックを手がけたのは、沈黙を語る人ことナヲト・スズキ。3年くらい前から、その名義でラップを始めMCバトルに参加。アスベストやメテオのトラックも手がけている謎の人物である……なんて書いてみたが、DJフリークのレビューの際にも名を出したように(実は名前間違えてたけど)、かつてテクノブーム華やかりし90年代半ばより、ニコニコ殺人団として地下活動を始め、複数の名義で主に海外のレーベルからガバ/ハードコア(時にはアンビエントやミニマルハウスまで!)を大量にリリースしていた前歴、いや、初期ライブでの所業を観ていた者からすれば、立派な「前科」を持つ男なのだ。ちなみに本作の発売元に名を連ねている帝国レコーズは彼が当時からやっている個人レーベルである。

だからというわけもないが、その関係性はゴッド~(ソニック・ブームや前出のケヴィン・シールズとの)エクスペリメンタル・オーディオ・リサーチなどを渡り歩いたケヴィン・マーティンが、元ナパーム・デスのジャスティン・ブロードリックと結成したテクノ・アニマルで元カンパニー・フロウのエル・Pとコラボする、という散在していた点が自然に結びついていった様と、インダストリアルな音の質感も含め共通したものを感じる。

それはともかく、シンプルな日本語ラップ・アルバムだ。本人たちもそのつもりで作ってるはず。しかし、その間で交わされるキャッチボールは、ナックルやスローカーブみたいな捕りづらい変化球をこれでもかと投げあってるかのよう。その互いの人間的資質からくる独特の捩れは「♯●●」みたいな常套のタグをなんとはなしに拒否する。かといって、90年代後半にECDや高木完らが示した「外れる事がヒップホップだ」という逆説的賛辞さえ有効ではないだろう。 そもそも、彼らのように内側にいた事が無いのだから。バズれることもなければハズれることもない、常に境に引かれた線を遊び半分で行ったり来たりする冷たい音楽。

hahano.jpg
ハハノシキュウ
『リップクリームを絶対になくさない方法』
(君の嫌いな物語/帝国レコーズ)




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RECORDer編集長。
ひとりE.A.R.(永遠に丁稚)

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